“新規事業”や“社内ベンチャー”という言葉は、以前より使われている。”大企業内スタートアップ?”、“同じことじゃないか。もうやっている。”という意見も出るだろう。 だが、ベンチャーという言葉と区別して”スタートアップ”という言葉を使い始めた背景には、最近の時代の流れに基づく重要な意味がある。
”スタートアップ”には、こんな説明がある。“新しいビジネスモデルで短時間のうちに急激な成長とエクジットを狙う一時的な集合体” (btrax.com)
従って、スタートアップは、中小企業の特権ではなく、時流に遅れ始めた大企業や、新規事業を立ち上げられない旧態然とした大企業こそが推進するべきものだ。
“大企業が経営者主導のもと社内スタートアップに取り組むべき時代”になったといえるかもしれない。
各企業の取り組みにあたり、次の三つの動きがある。
(1)オープンイノベーションを推進して”スタートアップ“を醸成する。
(“オープンイノベーション”という言葉は、経産省の白書にも載った。これに関連するが動きが多様化している。大学や産学官の共同研究も”オープンイノべーション“として話題になっている。)
<企業例>
·
味の素<2802>には、イノベーション研究所があり、食とアミノサイエンスに特化した世界レベルのオープンイノベーションを推進し、新規事業に結びつけようとしている。
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パナソニック<6752>は、スタートアップ企業と協業でオープンイノベーションによる事業創出を目指す”企業アクセラレータープログラム”をスタートさせた。
(2)スタートアップによる新ビジネス醸成を支援するビジネスモデルを推進する。
<企業例>
· 富士通<6702>は、革命的なスタートアップ企業をアクセラレータプログラムで支援する。自社のベンチャーファンドの活用や他のスタートアップ支援企業とのマッチングも行う。
· CREWW<未上場>は、スタートアップ企業の成長ドライバーになるべく、大企業とのマッチングを支援するプラットフォームを運営する。
· Supernova<未上場>は、新産業創出を行うスタートアッフを生み出す起業家を支援するコミュニティを運営する。
(3)自社内でスタートアップとして動けるチームを構成し新ビジネスを醸成する
(制度の内容については、比較検証する必要があるが、スタートアップ制度と命名して導入している企業がある。)
<企業例>
· 東芝<6502>は、社内のボトムアップアイデアの事業化を試みる。
ネールをメディアにしてしまう斬新なプロジェクトが最近ニュースとなった。
· UNITED<2497>は、「U-start」という社内起業支援制度を活用し、社内起業家に新設のグループ会社を設立するチャンスを与える。
大企業がスタートアップを考える場合、3つの大きなポイントがある。ネタの選び方とチームのつくり方、スタートアップ業務プロセスだ。
ネタ選びで従来の新規事業アイデアの“技術シーズありき”志向だけではだめだ。大企業には、自社の強みである技術的イノベーションシーズは確かにたくさんある。まずは、その中から、市場破壊できる可能性を持つビジネスモデルに結びつくネタを探し出すこと。次に、独立したリーンイノベーションプロジェクトチームをトップダウンで作ること。そのビジネスインキュベーションのファーストステップの企画を立てさせ、事業化へのステップとエクジットを明確にして資金と人材を与えてプロジェクトを一任すること。これこそが、社内スタートアップ業務プロセスの第一段階となる。
リーンイノベーションのネタを大企業はたくさん持っている。中小ベンチャーとの連携やM&A,オープンイノベーションを考える前に自社のネタと社内スタートアップを考えるべきだ。ただ、上にあげた(3)の例をみると、破壊的ビジネスモデルに結びつく本来の“スタートアップ”へのアプローチとしては物足りない。
日本を代表する大企業が、既存市場の破壊をおそれず社内スタートアップを推進することが日本の経済力を高める大きな原動力になることは間違いない。 それを推進するにあたって技術的だけでなく、“イノベーションのジレンマ”をよく理解して大企業のスタートアップ阻害要因をとりのぞくことができる資質も今の大企業の経営者に求められている。
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