2018/08/31

「スマートファクトリー」は地球環境に貢献する!


新しいスマートファクトリーの時代
ファクトリーは、製造業の話か?  いや、今や農業にも漁業にも物流拠点も絡んでファクトリーの概念が必要な時代となってきた。 どんな業界でも最先端の工場で培われているスマートな業務処理の例を学ぶべきだ。
スマートファクトリーという言葉でなにを連想するだろうか? アカデミー組織は、xxTech,  xxx4.0 のような新語をどんどん作り出す。さらに最近ではAI/IoTという言葉もよく抱き合わせで使われ産業界はそれらの新語に振り回される。大手のIT会社やコンサルティング会社は、いかにも新しいコンセプトかのようにニューソリューションとして売り込んでくる。いろいろな新語のセミナーが開催されているが、現実に自社に適した形でどうやって導入していくのかは、はなはだわかりにくい。それらの新語の中で、スマートファクトリーという言葉はそのイメージが比較的湧きやすい。業務改革は、営業、開発、製造、物流等の業務をスマートに(リーンに)することであってその視点から始めるべきだ。 とにかく、“xxTech,xx4.0,IoT,AI,働き方改革という流行り言葉からスタートしない方が良い。
 21世紀に入ってERPやロボートを導入した近代的な工場はすでに数多く存在し、それらは十分にスマートファクトリーと言える。IoTの概念のデータ収集も長年行われてきた。新語にまどわされて全く新しいことをやらなければいけないのではなく、工場には、昔から何も変わっていない普遍の目標がある。生産性の向上や品質リスクの回避である。「IoTの進化やAIの活用は、その目標をより高度な形で実現していくための単なる手段」と考えた方が良い。AIに代表されるICTの活用方法が急激に進化してきたので、経営者の啓蒙や責任者の学習も当然必要となるが、“AIIoTを導入しろという指令では、部下はとまどい現場からは反対が出る。経営者は、まず今までどおり解決しなければならない現場の最大の課題を3つ明確にすること。その課題解決の責任者に対し、たとえばAIを活用することを明確に示すことだ。その業務で経験を積んできた社内の専門家を支援できるようにAIを活用すること。これがAI業務改革のスタート地点だ。 業務改革はIT部門の仕事ではない。IT部門、IT技術者、CIO等の従来の考え方はもう古くその経験も役に立たなくなりつつあるので旧態然としたIT部門に任せたり、新時代に対応できていない現場に遠い外部のコンサルに頼るのも経費の無駄遣いだ。社内プロジェクトで課題に応じた最先端のAIエンジンやAI応用ソリューションをみつけ、そのソリューションを課題部門の専門家と一緒に導入していくことがデジタル時代・AI時代・新スマートファクトリー時代の業務改革だ。
もう一つの時代の流れとして、今の経営者は、業務改革の中で、ESGという言葉に代表される地球環境に関する要素を常に頭に入れなければならない。
 環境問題には、エネルギーや資源や廃棄物の問題が絡んでいる。それらの問題は、いろいろな形で自社の業務課題と関連してくる。電力、汚水、排ガス、廃棄物等に対する環境課題にたいする経営者の姿勢は、長期的な業績に必ずや影響を与えると考えた方が良い。新たなスマートファクトリーの時代の新技術をいかに自社の課題解決に素早く活用できるか、いかに自社の強みを生かした新規事業に結びつけるか、そしていかに環境課題を考慮するか、が重要な視点だ。   
経営者は、そこを見極めて、他社より先に時には大胆に“経営者自ら”課題業務へのAI導入といった決断を下し推進することが業績向上につながっていくだろう。

省エネ・人員削減・ロジスティクス革命は、まさに環境に貢献
  経営課題として、省エネ・人員削減・ロジスティクス革命は、どの業界でも注目されているだろう。その具体的な課題解決をスマートファクトリーの新時代の動きと連携すれば、そのことで、間違いなく環境課題に対して大きく貢献する。その三つのエリアの改革例をあげてみる。

< データセンターの省エネ >
  データセンターは、省エネが深刻な課題だ。世界のエネルギーの約3%を消費しているといわれている。その約45%が空調に約30%HDD等のIT装置に使われている。その大手ユーザーであるGoogle, Microsoft, Facebook等は、各社とも再生可能エネルギーでその電力を賄うプロジェクトを推進している。冷却に関しては、NECやさくらサーバーは、冷却費削減のため北海道に大規模サーバーを展開しているし、世界的にも冷却に適したロケーションでの操業が進んでいる。 この領域でもAIが応用されている。GoogleNTTファシリティーズのデータセンターでは、発熱装置・冷却装置に多数のセンサを取り付け、AIシステムが省エネを制御している。


  1. データセンター冷却AI (出典:NTTファシリティーズ)


Western Digitalは、省エネの画期的なサーバー用HDDを開発し、大量にデーターセンターに収めている(開発部門は日本、藤沢)HDD内部では動体に対する空気抵抗が消費電力の最大の課題だったので、内部を空気からヘリウムに変えたのだ。この技術革新は、省エネ・地球環境保全に大いに貢献している。


  図2. HelioSeal HDD (出典:Western Digital)


< グローバル企業の人員削減 >
 日本電産は、昨年スマート工場化でアジアの人員3万超削減したと発表した。 経営者の課題意識と素早い決断・指示が功を奏している。

< ロジスティックスの新ビジネスモデル >
  日立ハイテクノロジーズが、タイを起点とした新たな製造業ビジネスモデルを推進している。通常は、1社の中、工場の中のスマート工場化に発想が行くが、会社間連携とグローバルロケーションの最適化を図るこの試みが面白い。


3. アジアをまたぐスマート工場コンセプト (出典日立ハイテクノロジーズ)


環境ビジネスは新規事業の格好のネタ!  アジアで新プロジェクトを動かすAgile Mind!
 孫さんの提唱するアジアスーパーグリッド構想をご存知だろうか? 
地球環境を考えた場合、日本の中でちまちまと活動しても、地球の惑星限界への道を遮ることはできない。日本の企業(日本の技術・日本の人材)が、“今後のエネルギー消費の増加のかなりの比率を閉めるアジア(中国とインド比率高し)各国の環境課題解決に貢献するという使命感を持って、各社の強みをアジア連携ビジネスで生かしてほしい。ベンチャー経営者や中国の新鋭経営者のように、“機敏に判断して動く”Agile Mindを持って、、、
 
執筆者名:三竿郁夫IA工房代表
ブログ名: 「IA工房」

2018/08/16

【Smart Factoryの進化】

“スマート・ファクトリー”という言葉がよく使われるようになった。産業界・IT業界は、どんどん新語を作り出していかにも新しいコンセプトかのようにニューソリューションとして売り込んでいく。xxTech, xxx4.0 という言葉もよく抱き合わせで使われる。 確かにITを活用した多くの動きが進んでいるのでその動きを見極めて、時には大胆に、時には地道に、自社の課題解決を推進することが業績向上につながる。

最近のスマートファクトリーの企業話題を取り上げてみる。
■ IBMは、”AI+IoTを活用したスマートファクトリー”と称して、匠の技術継承にWatsonで培ったコグニティブ戦略を強調する。
■ 安川電機<6506>は、「生産変動に強い工場」をスマート工場の一つの目標に捉えて入間事業所に最新のスマート工場を実現する
■日本電産 <6594>は、アジアの人員削減をテーマとして、ロボットの活用やAI技術の活用に積極的だ。
■日立ハイテクノロジー<8036>は、ロジスティックスやBPO等をうまく取りまとめた新たなグローバルスマートファクトリーのビジネスモデルを作り上げ、タイを中心に稼働を始めている。

製造業にとって重要なことは、スマートファクトリー、AI, IoTという時代の新語を前面に押し出す大手ITソリューション会社やコンサルティング会社の思惑に惑わされず、具体的な自社の課題を明確にしてそのソリューションを多くの選択の中から選ぶことだ。

企業の改革は、最大3つの課題解決をまず優先するべきだ。 課題を明確にし、社内のそのエリアの専門家を中心にいち早くAI/IoTの活用をトライすること。それがスマートファクトリーへの近道だ。 ここにも起業家と同じスピードを重視する Agile Mindが求められる。 中国企業に遅れを取らないように、、、

2018/07/31

「エネルギー新時代にアジアで活かしたい日本のコア技術!」


エネルギー革新の時代に日本は
20164月内閣府が「エネルギー・環境イノベーション戦略」を、経済産業省が「エネルギー革新戦略」を発表した。その中で、「創エネルギー」「蓄エネルギー」「省エネルギー」の3つに分けて有望革新技術を特定している。「創エネルギー」では、再生可能エネルギーの発電効率とコスト、「蓄エネルギー」では、リチウム電池を超える革新技術と水素等の効率的エネルギーキャリアに着目している。それに加えて、“研究体制を強化して、シーズの創出、産業界の研究開発投資、国際共同開発をあげ、世界をリードして、気象変動対策と経済成長を目指す。”としている。
1. エネルギー環境イノベーション戦略 (出典:内閣府)
      

一方、将来のエネルギーのグローバルで複雑なバリューチェーンを考慮した場合、もう一つ「送エネルギー」の分野の革新が重要となる。再生エネルギーの拡大や水素社会の実現の最適化では、「創エネルギー」「蓄エネルギー」「送エネルギー」の体系的な戦略が求められる時代となったが、この大きな流れの中でも、現在とりわけコアとなる技術はモーターと電池である。

HV/PHV/EV/FCV時代を支える日本のモーターと電池のキーテクノロジー
 2016年の自動車部品市場は、約20兆円そのうちEV車で必要のなくなる部品は、約5兆円と言われている。 ガソリンとエンジンが不要となり、電池あるいは発電機とモーターに変わっていく、まさにクリステンセンの説く破壊的イノベーションが始まっている。それに伴って、キー部品であるLiイオンバッテリー、EV用ブラシレスモーターやECUの量産化に向けて大型の企業連携が進行中である。EV用バッテリーでは、パナソニックとトヨタ・テスラ、NECと日産、NSユアサとホンダ・三菱自等の連携のもとに供給体制を作ってきたが、EV市場は2025年までに4000-7000万台と膨大な数量の予測が出ている(数値は外務省資料より)。 コア部品であるLiバッテリーを例に挙げると、Liの供給不足と長期信頼性問題という大きなリスクをかかえている。 またEV用モーターでは、希少金属ネオジウム等のマグネット材料の確保と高効率モーター技術が重要となる。 いづれも日本の強い技術領域であるが、今こそ優先順位をあげて産学官が連携して日本の技術の優位性をさらに推し進めて欲しい。
NEDOでは、革新電池の開発目標を図2のように示している。

2. 革新電池開発目標(出典:NEDO)

再生エネルギーでも必要とされる発電機・蓄電技術
日本では、太陽光発電の普及が顕著であるが、世界を見ると太陽光に加え、風力・水力の拡大が目立っている。特に、イギリスでは洋上風力を国の需要の3分の1をまかなう主力の発電に成長させつつある。日本でも洋上風力の大型プロジェクトが秋田や山口で動き出し、小水力発電も農村整備事業の一貫とし100施設を超えた。ただ、市場拡大にあたっては、風力発電がは自然環境問題・風車の落下問題・コスト問題等の課題を抱え、小水力も設備費・維持費の採算性の課題を抱える。また、それぞれに活用されるべき発電機と蓄電装置は、 EV市場などとは違った要求仕様がありEV市場とは違った設計アプローチが必要となる。各国での再生エネルギーのニーズと課題を整理し、発電機や蓄電装置にフォーカスして的を得た技術シーズとビジネスチャンスを探っていきたい。
たとえば、
風力の発電効率を飛躍的に改善する低回転高効率モーター
・水路を活用する安価で高発電効率の小水力発電装置
Liバッテリーの弱点を克服した高信頼性・維持管理の容易なRedoxFlow等の活用
風力・水力の現場での新2次エネルギー変換装置(液体水素への変換)
・風力・水力の現地基盤で小規模のCMESを実現するためのエネルギーマネージメントシステム
等々。

それらの技術シーズをアジアの中進国・後進国の再生エネルギー戦略の可能性と課題に照らし合わせ、各国のニーズに合った日本の技術シーズとして実用化し、まずはニッチなエリアで国際連携の実証実験をすることで、コア技術を育てあげ大きな事業に育てていくようなインキュベーションプロジェクトを推し進めるべきだと思う。」

アジアで「送エネルギー」新プロジェクトが動き出した
電力網やガスインフラのグローバル化に伴い「送エネルギ―」の観点から国内では想像のできなかった壮大なアイデアが出てきている。中国の主導で動きだした一帯一路政策やソフトバンク孫社長が描くアジアスーパーグリッド構想は、エネルギーの国際的連携戦略を提唱している。そして2次エネルギー水素が動き出すと液体水素による「送エネルギ―」が始まる。それらの動きに呼応するキーイノベーション技術の動向に注目したい。 
日本国内のように電力・ガスのインフラが出来上がった地域では、既存のインフラ関連会社の思惑が足かせとなって「送エネルギー」の大きな変革は起こしにくいが、アジア全体に目を向ければ、 こういった国をまたいだ大型プロジェクトだけでなく、小さなコミュニティ間、地方都市間での最適化を考慮した「創、畜、送エネルギー」システムを構築し電力にこだわらない「スマートグリッド」を実現していけるチャンスではないだろうか。
内閣府、NEDO、農政省等の戦略が、日本のコア技術を発展させ環境にやさしいエネルギーサステイナブルなアジア連携・アジアビジネスとして展開され具体的に実を結ぶよう期待している。