2016/11/18

【環境】2030年水素社会が動きだす

 “水素社会”という言葉が使われ始めている。2次エネルギーである水素は、今までのあらゆる1次エネルギーと連携して、社会を変えていく可能性がある。その未来像として“水素社会”“水素エネルギーシステム”“大量水素時代”というイメージが出来上がりつつある。


 その中で、特に脚光を浴びているのが水素自動車(FCV)であるが、FCVはその一端の水素利用方法にすぎない。各種一次エネルギーからの水素製造、水素貯蔵、水素輸送の技術が相まって水素利用につながっていく、実にスケールの大きなグローバルなエコシステム話であり、“水素社会”の実現に向けて、産学官および国際連携の動きが活発となってきている。 

 2030年は、この壮大な構想の実現に向けて重要な目標の年になっている。

 その技術要素であるエネルギー変換(水素製造プラント)、エネルギー輸送(水素サプライチェーン)、エネルギー備蓄(液化水素貯蔵タンク)、エネルギー再生(水素発電、水素自動車FCV等)に関連して、いろいろな企業がその壮大な構想の一端を担うための開発・実用化を目指している。  

  “水素社会”構想の実現にむけて積極的に開発・実用化を目指す企業の例をあげてみる。

水素製造装置

  • 東芝:太陽光を利用した水素製造技術を「H2ONE」システムで商用化。
  • 三菱化工機: LPG利用の小型水素製造装置を開発。
  • 昭和電工: アンモニアから水素燃料を製造する技術の開発に成功。
  • 千代田化工:市場アクセスが困難な化石資源褐炭から水素燃料を製造。

水素貯蔵装置

  • 東芝:大容量水素貯蔵システムを開発。
  • 旭化成ケミカルズ:高出力のメタノール型燃料電池(DMFC)を開発。
  • 三菱重工, J-POWER:SOFC(固体酸化物燃料セル)モジュール
  • パナソニック:家庭用・マンション用燃料電池エネファームを商用化。

水素輸送装置

  • 川崎重工: 水素燃焼タービンと水素輸送船を開発。
  • 千代田化工:川崎重工と共同で、水素大量貯蔵輸送技術の開発。

水素利用(水素自動車FCV)

  • トヨタ: 水素自動車FCV「MIRAI」を商用化。
  • ホンダ:FCV「CLARITY FUEL CELL」を商用化。
  • 岩谷産業: 水素ステーションを商用化。
  • セブン&アイ・ホールディング:コンビニに水素ステーションを設置。 

水素利用(水素発電)

  • 川崎重工/大林組:神戸で水素発電所運転開始。
  • 日立製作所: 北海道電力,風力を水素変換、水素発電することで、出力変動を吸収する技術を開発中。

水素利用(エネファーム)

  • 東京ガス : パナソニックと共同で水素備蓄によるエネファームを開発。
  • 大阪ガス:アイシン、京セラ,トヨタと共同で新型高効率エネファームを開発。

水素利用(水素タウン)

  • 静岡市:静岡ガス・パナソニックの支援で、静岡型水素タウンの実現を目指す。
  • 北九州市:ホンダと共同で、V2H(水素自動車から家庭への電力利用)による電力平準化実験。
  • 川崎市:千代田化工等と共同で、臨海部に水素供給基地を計画。
  • 東京都:千代田化工等と共同で、5輪選手村を水素タウンに発展させる計画。
  • 神戸市:川崎重工、岩谷産業、J-POWERと共同で海外からの水素サプライチェーン実証実験。

 2030年には、世界のエネルギー輸送のうち、2次エネルギーである水素での輸送比率が増え、水素自動車の本格商用化が始まり、水素発電比率もあがってくるだろう。そして電力供給の最大の課題であるエネルギー備蓄がいろいろな場所で水素として貯蔵されるようになる。

 そして、水素社会の実現が、CO2削減、ひいては、地球環境保全に大きく貢献していくことになる。企業にとっては、エネルギー・環境に直接関与する企業のみならず、“水素社会”へ対応する関連ビジネスに乗り遅れないことが中長期的に非常に重要になってくるだろう。


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