2018/07/31

「エネルギー新時代にアジアで活かしたい日本のコア技術!」


エネルギー革新の時代に日本は
20164月内閣府が「エネルギー・環境イノベーション戦略」を、経済産業省が「エネルギー革新戦略」を発表した。その中で、「創エネルギー」「蓄エネルギー」「省エネルギー」の3つに分けて有望革新技術を特定している。「創エネルギー」では、再生可能エネルギーの発電効率とコスト、「蓄エネルギー」では、リチウム電池を超える革新技術と水素等の効率的エネルギーキャリアに着目している。それに加えて、“研究体制を強化して、シーズの創出、産業界の研究開発投資、国際共同開発をあげ、世界をリードして、気象変動対策と経済成長を目指す。”としている。
1. エネルギー環境イノベーション戦略 (出典:内閣府)
      

一方、将来のエネルギーのグローバルで複雑なバリューチェーンを考慮した場合、もう一つ「送エネルギー」の分野の革新が重要となる。再生エネルギーの拡大や水素社会の実現の最適化では、「創エネルギー」「蓄エネルギー」「送エネルギー」の体系的な戦略が求められる時代となったが、この大きな流れの中でも、現在とりわけコアとなる技術はモーターと電池である。

HV/PHV/EV/FCV時代を支える日本のモーターと電池のキーテクノロジー
 2016年の自動車部品市場は、約20兆円そのうちEV車で必要のなくなる部品は、約5兆円と言われている。 ガソリンとエンジンが不要となり、電池あるいは発電機とモーターに変わっていく、まさにクリステンセンの説く破壊的イノベーションが始まっている。それに伴って、キー部品であるLiイオンバッテリー、EV用ブラシレスモーターやECUの量産化に向けて大型の企業連携が進行中である。EV用バッテリーでは、パナソニックとトヨタ・テスラ、NECと日産、NSユアサとホンダ・三菱自等の連携のもとに供給体制を作ってきたが、EV市場は2025年までに4000-7000万台と膨大な数量の予測が出ている(数値は外務省資料より)。 コア部品であるLiバッテリーを例に挙げると、Liの供給不足と長期信頼性問題という大きなリスクをかかえている。 またEV用モーターでは、希少金属ネオジウム等のマグネット材料の確保と高効率モーター技術が重要となる。 いづれも日本の強い技術領域であるが、今こそ優先順位をあげて産学官が連携して日本の技術の優位性をさらに推し進めて欲しい。
NEDOでは、革新電池の開発目標を図2のように示している。

2. 革新電池開発目標(出典:NEDO)

再生エネルギーでも必要とされる発電機・蓄電技術
日本では、太陽光発電の普及が顕著であるが、世界を見ると太陽光に加え、風力・水力の拡大が目立っている。特に、イギリスでは洋上風力を国の需要の3分の1をまかなう主力の発電に成長させつつある。日本でも洋上風力の大型プロジェクトが秋田や山口で動き出し、小水力発電も農村整備事業の一貫とし100施設を超えた。ただ、市場拡大にあたっては、風力発電がは自然環境問題・風車の落下問題・コスト問題等の課題を抱え、小水力も設備費・維持費の採算性の課題を抱える。また、それぞれに活用されるべき発電機と蓄電装置は、 EV市場などとは違った要求仕様がありEV市場とは違った設計アプローチが必要となる。各国での再生エネルギーのニーズと課題を整理し、発電機や蓄電装置にフォーカスして的を得た技術シーズとビジネスチャンスを探っていきたい。
たとえば、
風力の発電効率を飛躍的に改善する低回転高効率モーター
・水路を活用する安価で高発電効率の小水力発電装置
Liバッテリーの弱点を克服した高信頼性・維持管理の容易なRedoxFlow等の活用
風力・水力の現場での新2次エネルギー変換装置(液体水素への変換)
・風力・水力の現地基盤で小規模のCMESを実現するためのエネルギーマネージメントシステム
等々。

それらの技術シーズをアジアの中進国・後進国の再生エネルギー戦略の可能性と課題に照らし合わせ、各国のニーズに合った日本の技術シーズとして実用化し、まずはニッチなエリアで国際連携の実証実験をすることで、コア技術を育てあげ大きな事業に育てていくようなインキュベーションプロジェクトを推し進めるべきだと思う。」

アジアで「送エネルギー」新プロジェクトが動き出した
電力網やガスインフラのグローバル化に伴い「送エネルギ―」の観点から国内では想像のできなかった壮大なアイデアが出てきている。中国の主導で動きだした一帯一路政策やソフトバンク孫社長が描くアジアスーパーグリッド構想は、エネルギーの国際的連携戦略を提唱している。そして2次エネルギー水素が動き出すと液体水素による「送エネルギ―」が始まる。それらの動きに呼応するキーイノベーション技術の動向に注目したい。 
日本国内のように電力・ガスのインフラが出来上がった地域では、既存のインフラ関連会社の思惑が足かせとなって「送エネルギー」の大きな変革は起こしにくいが、アジア全体に目を向ければ、 こういった国をまたいだ大型プロジェクトだけでなく、小さなコミュニティ間、地方都市間での最適化を考慮した「創、畜、送エネルギー」システムを構築し電力にこだわらない「スマートグリッド」を実現していけるチャンスではないだろうか。
内閣府、NEDO、農政省等の戦略が、日本のコア技術を発展させ環境にやさしいエネルギーサステイナブルなアジア連携・アジアビジネスとして展開され具体的に実を結ぶよう期待している。

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