2018/06/09

【冬のモンゴル・ウランバートルに青空を! 】

アジアの汚れた空

アジアの新興国が歩もうとしている道が地球全体の環境破壊を大きく加速し、日本の環境問題が解決しても、アジアの環境問題が解決しない限り、2050年−2100年(我々の孫やひ孫世代の時代)には地球が惑星限界を迎えると言われている。



 

 






 


1971年まで空のきれいな岡山の田舎で育った私は、1960年代の汚れた四日市や川崎・東京の大気汚染の最悪の状況を目にしていない。日本ではその後も光化学スモッグ等の問題もあったが、排気ガス対策等で日本の空はどんどんきれいになった。その苦い経験を通して、日本には世界に誇れる長年培ってきた汚水・排煙の処理技術、省エネ技術があり、また、現場で苦労した知恵と経験を持つ豊富な人材がいる。
それに比して、1990年以降に急速に発展して来た東アジア、東南アジアには、近年ほとんど青空の見られない街が多く存在する。そんな街に行った時の衝撃は忘れられない。1995年から中国の深圳やタイのバンコクによく行ったが、綺麗な青空を見れることはまずなかった。最近では、北京・ムンバイ・ニューデリーに行き『晴れてるのに青空が無い』現状を目の当たりにしてきた。そして、その解決の道筋は明確には示されていない。中国やインドや東南アジアの国々は、この深刻な大気汚染問題を自国で解決できるだろうか?
2040年の大気汚染に関連した世界の死者は、700万人に達すると言われている。(WHO)

ウランバートルのPM2.5とこれまでの対策

アジアの国々を見ると大気汚染の原因、規制の状況、対策の進捗度は異なる。
昨年モンゴルの友人に誘われ、観光シーズン8月のウランバートルに行った。 8月は空のきれいなモンゴル・ウランバートルの事情は、ちょっと他の都市と違っている。 ウランバートルには、他の都市と違う特異な季節変動がある。
図1.ウランバートル PM2.5季節変動 (出典: Simon Fraser University’s Ryan Allen)
図1.ウランバートル PM2.5季節変動 (出典: Simon Fraser University’s Ryan Allen)
長い冬季のウランバートルは、郊外に住む多くの低所得者層がゲル街を形成し粗悪な石炭をゲルストーブ暖房に使う。そこから発生する大気汚染(PM2.5の数値)は、時には北京やムンバイよりも悪くなることがある。この状況は以前より認識されており、JICAは2010年いち早くウランバートル市の大気汚染対策強化プロジェクトに参画し支援した。しかし、最近ヒアリングした結果によると解決への見通しは見えていない。
図2.ウランバートルでの視察とヒアリング
図2.ウランバートルでの視察とヒアリング

アジアで環境ビジネスの共創を

環境問題の解決は、各国とも特有の難しさを抱えている。ODAやJICAの協力だけでは解決できない。各国のエネルギー戦略も大きく影響してくる。したがって、産学官の連携なしでは、解決のための実現性のあるフレームワークはできない。そして一番重要なのは、熱意のある企業が中心になって動き出すことだ。
モンゴルのNewcomグループは、GEやSBエナジーと提携し、再生可能エネルギービジネスを立ち上げ、アジアスーパーグリッド構想の一端を担おうとしている。
日中文化経済交流発展基金会(JCCEF)には、中国科学院から要請があり、日本の環境技術の中国への橋渡しを行っているが、2月JCCEFでは、「アジア環境ビジネス共創協議会」を開催した。中国のEVビジネスやモンゴルの再生可能エネルギービジネスの現地のCEOを招き、現地企業が目指すアジアの環境対策のために日本の企業、環境技術、環境人材がいかに役立てるかの協議を始めた。
図3. アジア環境ビジネス協議会でのモンゴル企業CEOの講演。
図3. アジア環境ビジネス協議会でのモンゴル企業CEOの講演。
モンゴルのビジネス共創プロジェクトでは、ウランバートル郊外での太陽光、風力や地中熱を活用したエネルギーサステイナブルなCEMS (コミュニティエネルギーマネージメント)の検討に入っている。エネルギーインフラ(電気・ガス)のない地域でのエネルギーサステイナブルなCEMSをBOPビジネスとして共創すれば、モンゴルだけでなく多くのアジア・アフリカの後進国の今後の環境問題解決の一つの道筋になるかもしれない。

日本の環境技術と企業への期待

大気・汚水・土壌汚染等の環境プロジェクトは、従来の政府間連携や企業間国際連携だけでは事足りず、政府・自治体・現地団体等が一体となって参画する具体的なフレームワークと資金調達がなければ成功は難しい。一方、環境課題プロジェクトは、日本がアジアをリードでき、日本の技術と人材を生かして世界の環境保全と産業の活性化に貢献できる最も可能性のある成長分野の一つだ。
日本の製造業やESG投資に関連した金融組織が、アジア環境ビジネスの共創のために協業し、アジア各国の課題解決にチャレンジする現地企業を応援し、現地でのビジネスを共創していく構図を作りたい。その流れの中で、長期的な視野でアジアの環境課題に真剣に目を向けた日本の企業が多く出てくることを期待している。

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